再び、スワンベーカリー
心や体に障害のある人もない人も、高齢者も若者も共に働く場を――この理念を、「ノーマライゼーション」と言う。先月ご紹介した「スワンベーカリー」を支援している「ヤマト福祉財団」も、この考えを具現化している団体だ。 スワンベーカリーは銀座に直営店をオープンさせ、翌年の平成十一年に、わが家の近くにある「十条店」がチェーン店第一号としてオープンした。今では全国に二十店舗以上をチェーン展開するまでになっている。十条店を成功させた小島靖子さんは、都心の霞ヶ関や、隣駅の赤羽にも支店をオープンさせた。 十条店にはカフェもある。私も散歩の途中に立ち寄ることがあるのだが、就労支援相談コーナーには、小島さんを慕って養護学校の卒業生が訪れている。 ヤマト福祉財団の事業はスワンベーカリーだけではない。障害者福祉に関するさまざまな支援を行なっている。たとえばヤマト運輸のメール便も、障害者が配達していることがあるのを、ご存じだろうか。 障害者が普通に働ける社会を目指すのが、ノーマライゼーションの考えだ。そこで、ヤマト運輸のメール便配達業務を、財団が斡旋する。 まず、施設や作業所の責任者が、ヤマト運輸とメール便配達委託契約を結ぶ。あくまでビジネスだから、万が一にもメール便が届かないような事態が起きてはいけない。だから障害の程度などに応じて、配達量を調整をする。配達手数料は、健常者と同額だ。 |
十条店の経営母体である「㈲ヴイ王子」（経営者の一人が小島さん）では、このメール便配達事業も始めた。パンづくりには向かないが配達はできるという人には、そちらをやってもらえばいい。健常者にも向き不向きがあるように、障害者にも向いている仕事とそうでない仕事がある――という考えである。 障害を持つ人のことを、本当にわかっていないと生まれない考えだと思う。 スワンベーカリーは、ボランティア施設ではない。店舗として経営を成功させ、なおかつ障害者雇用の受け皿となることを目的にしている。行政による障害者支援にあまり期待できない今、このような形態のビジネスがもっと広がって欲しいものだ。 残念ながら、スワンベーカリーは四国にはまだない。最も近いところで広島県三原店、岡山県倉敷店である。だが四国でもいずれは、この事業への参加に手を上げる人があらわれることを願っている。 （片山一行・出版プロデューサー、エディター） ■四季録トップへ |